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YouTubeはなぜ成功したのかYouTubeはなぜ成功したのか
室田泰弘 著(東洋経済新報社、2007年5月発行)

本書には余りYouTubeのことは書かれていないので、タイトルから受ける印象と少し違った内容だった。しかし、おもしいビジネス書だった。最初、ヒルマン・カーティス(Hillman Curtis)のビデオ・ハイクの紹介はおもしろかた。ハイクとは俳句のことで、彼はショート・ムービーを使って、今までにはないデジタル芸術の概念を創り出したと紹介している。それはYouTubeが可能にした作品というわけだ。

本書はしかし、YouTubeのこのような個々の作品を紹介するものではなくて、ヤフーやグーグル、リナックス、ナップスターなどの象徴としてYouTubeを考える。これら今までのないものが作られる現代を18世紀イギリスの第一次産業革命と同じだと考えている。だから、今起きていることはムチャクチャに大きな変化なわけ。この現代の急速な変化を読み解くカギがYouTubeだと言っている。

過去の歴史的解説がある。異論のない意思決定がいかに危険かという例としてケネディ政権下の1959年「ピックス湾事件」と1939年の「ノモンハン事件」が引き合いに出されていたのには驚いた。どちらも失敗に終わった作戦だ。

これらのことは現代の事例に関連しているらしい。それは、日本のテレビ界が時代遅れのアナログ・ハイビジョンに固執してデジタル化に乗り遅れたこと。日本の携帯電話方式が世界の中で、今やきわめてマイナーな存在になってしまったこと。組織による意思決定や専門家の集まったプロジェクトの行き詰まりを指摘している。それらは異論がないという点で例にあげた軍事作戦に通じるらしい。

最近読む IT 関連の本はどれも、テレビ局や新聞社はいづれ立ち行かなくなるだろう、と言っている。本書も同じ主張のようだが、本書では中産階級の没落を指摘するなどより過激だ。一億総中流なんて言葉もあったが、いったいこの先どうなるのだろう。本書は不安をあおるものではない。未来に向けて、過去の事例に学び、物事の機微に敏感であれば乗り切れると言っている。

(2008.9.30 記)