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ウェブ国産力—日の丸ITが世界を制す- 佐々木俊尚 著(アスキー[アスキー新書047]、2008年1月発行)
グーグルやアマゾン、アップル、フェイスブックなどの現在のウェブの世界で日本のウェブ技術が独自の地位を築く可能性を考察する内容。国際競争力という数値化できる言葉ではなくて、国産力という抽象的な言葉を使用しているのは、ウェブの分野で日本の国際競争力を推し量るのに、この競争に参加する人々の「志」といったものも含めているからだと著者は言っている。だから本書では、現場にいる人々へのインタビューが随所に掲載されている。
グーグルが登場するまでは、日本の検索技術は世界的水準にあったという。それが進化しなかったのは、図書検索やデータベース検索というB2Bの分野に閉ざされていたせいだ。検索技術を開発し、そのソフトウェアをサーバーに収めて新聞社などに販売すると大手ベンダーもそこそこ儲けていた。しかし、そこから先へは進まなかったということらしい。
また、日本のネットベンチャーはアメリカと違って技術の裏付けに乏しかった。ネットベンチャーに優秀な技術者が流れなかったのは投資システムが未熟だったからだという。結果、オン・ザ・エッジやサイバーエージェント、GMOインターネット、楽天といったベンチャーは特別の技術力を必要とする事業ではなく、また技術革新を主導するわけでもなかった。ライブドアの一件など、テレビ報道の記憶がまだ生々しく残っているいま、こうしたネットベンチャーの分析は大変おもしろく読めた。
さて、グーグルを越える日本の検索技術の可能性はというと、検索キーワード(A)によってウェブ(B)を検索するのがグーグルを始めとする現在の検索エンジンだが、(A)は検索キーワードだけでなく、検索する人の属性や趣味趣向といったアイテムにまだ拡大することにある。また(B)はウェブに留まらず、リアル世界に存在するさまざまなデータなどのアイテムに拡大していくという。
本書では以下のような様々な開発が紹介され、技術者へのインタビューが行われている。ほとんど知らないものばかりで興味深く読めた。
・技術系ITベンチャーの「未来検索ブラジル」
・NTTドコモの「マイ・ライフ・アシストサービス」
・ブログウォッチャーというベンチャーの「プロファイルパスポート」
・財団法人国際医学情報センターの「すこやかライフサポートサービス」
・国産の検索エンジンを開発する経済産業省の研究会から生まれた産学連携プロジェクト「情報大航海プロジェクト」
これらのテクノロジーには、プライバシーに踏み込む個人情報や法的に解決しなければならない著作権の問題を抱えているという。本書ではこれらの問題をクリアーする困難さを語りつつ、解決することの可能性を未来志向的に考察されている。
しかしこれらのサービスを受けるってことは管理されるのと同じゃないのだろうか。サービスを便利と感じる人もいれば、管理と感じる人もいると思う。これは個人情報の公開がかまわないとか嫌だということと別なことだと思う。管理されることを受け入れる多くの人々を前提にしなければ上記の検索技術はなりたたないんじゃないだろうか。
そんな社会って、ちょっと飛躍するけどフィリップ・K・ディックとかウイリアム・ギブソン、そして士郎正宗などの小説やコミックに描かれている近未来世界を想像してしまうけど・・・心配のしすぎかもしれない。
(2008.9.7 記)

